身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「もう着替えたのか。似合っていたのに」

どこかがっかりしたように、高須賀さまは眉を跳ね上げた。

「申し訳ありません、十分後にほかのお客さまの打ち合わせが入っているので、少しバタバタしています」

髪を後ろでひとつに結び直しながらしか応対できず、私は彼に詫びた。

「いや、あなたのおかげで助かった。さすがに新婦側の列席者には別人だと気づかれたようだが、こちら側はうまくごまかせたようだ」

高須賀さまの口ぶりから、大きな問題がなかったことが窺え、私は安堵する。

「そうですか。それはよかったです。早く川嶺さまがお戻りになって、きちんと話し合えるといいですね」

結婚式は無事に終えられたけれど、ふたりにとっては今後が大事だ。

私は彼らの幸せを願わずにはいられなかった。

「あ、そうでした」
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