身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「お電話代わりました。今井でございます」

『高須賀です。先日はありがとうございました』

「いえ、大したお役に立てず……」

よく通る低い声に、私はとっさにかぶりを振った。

あれ以上どうしようもなかったとはいえ、川嶺さまがいないまま挙行しお開きになったことは、担当者として申し訳なかった。

「それで、その件であなたに話したいことがあるんだが、今夜食事でもどうだろうか』

出し抜けに誘われて、私は目をぱちくりさせる。

「お食事ですか?」

『ああ。先日の礼も兼ねて』

きっと電話では話せない内容なのだろう。けれどお客さまと社外で会った経験がなく、どう答えていいのかわからず戸惑った。

北瀬マネージャーに確認するため、受話器を耳に当てたまま彼の姿を探す。するとちょうど事務所に入ってきた彼と目が合った。
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