身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「申し訳ございません、高須賀さま。少々お待ちくださいませ」

私は電話を保留にし、北瀬マネージャーに声をかける。

「北瀬マネージャー、高須賀さまからお電話なのですが、先日の件で話したいことがあるので、今夜食事でもどうかと誘われまして……」

「え、食事? 今井さんと高須賀のふたりきりで?」

北瀬マネージャーは眉を跳ね上げた。

「ふたりきりかどうかは聞いてないのですが……」

困惑する私に、北瀬マネージャーは少し考える顔をしてから尋ねてくる。

「今井さんが嫌なら、俺から断るよ?」

「嫌ではないですが……。川嶺さまのことが気になるし、許可をいただけるなら行こうと思います」

「そっか。じゃあよろしくね」

あっさりゴーサインが出て、私は苦笑いした。さすがあの日有無を言わせず「高須賀の花嫁になってくれるかな」と言い放っただけはある。

高須賀さまに了承を伝えると、「では六時半にそっちに車を寄越すから、それに乗って来てくれ」と言い残し、電話を切った。忙しい方だからか、彼は今日も話し方が端的で、結局ふたりきりかどうかは訊けないままだ。
< 25 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop