身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
レストランの華やかなレセプションに向かうと、ネームプレートに支配人と肩書きのある男性がやってきて、私を通常の出入り口ではなく、その左側にあるドアに導いた。

中に入ると細長い内廊下があり、その先にドアがふたつ並んでいる。まるで秘密の通路にある隠し部屋のようだった。奥の部屋に通された私は目を瞠る。まさかこんなところにあるとは思えないくらい、広く豪奢な個室だった。

「高須賀さまはまもなくご来店されます。お先にお飲み物はいかがでしょうか」

繊細で緻密な彫刻が施された椅子に着席すると、支配人に尋ねられた。

私はぶんぶん首を横に振る。

「高須賀さまがいらっしゃるまで待たせていただきます」

こんな高級店にVIP待遇で足を踏み入れたのは初めてで落ち着かなかった。あまりにも場違いすぎて、ひとりでは対応不可能だ。
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