身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「新婦、サエ」

牧師は私に視線を向け、同じように尋ねる。

私はできるだけ深く考えず、「はい、誓います」と事務的に口にした。そして心の中で、神さま嘘をついてごめんなさい、と謝罪する。

次は指輪の交換だ。アテンダーにグローブをはずしてもらい、私は高須賀さまに左手を差し出した。

けれど、リングピローに載せられていたマリッジリングは私には少し小さかったようで、薬指の第二関節に引っかかって嵌らなかった。

途端に冷や汗が噴き出した私に、高須賀さまは涼しい顔で無理やり指輪を押し込む。

「……っぅ」

ジンジンする痛みに、私は小さく呻いた。けれどなんとか指輪が入り、ほっとする。

そうして私からも、高須賀さまの指にリングを嵌めた。こちらはサイズがぴったりだった。
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