身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
だから今回の件は、どうしようもなかったのだと思う。それでも高須賀さまが川嶺さまの心をわかってくれて、胸のつかえが取れた。たとえすでに終止符が打たれた関係でもそれは無駄ではなく、意味のあることだった。

「出過ぎたことを申し上げ、すみませんでした」

私は自分の立場を越えた発言を詫びた。

「いや、気づかせてくれて感謝する。二度と同じ過ちは犯さない。これからは何よりも相手の気持ちを考える」

嘘偽りのないまっすぐな高須賀さまの声に、私は顔をほころばせる。

「はい。今夜、高須賀さまとお話できてよかったです」

川嶺さまと連絡が途絶えてしまったのは残念だけれど、きっと今頃彼女も前を向いている。私はそう信じて、彼女の幸せを願う。今回のことで、私もよい人生経験をさせてもらえた。

「それで、俺があなたにプロポーズした件は」

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