身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
その次は誓いのキスだ。

高須賀さまは私のベールの中に親指を差し入れて持ち上げた。本来なら新婦がきれいに見えるように顔の横に来るベールは後ろのほうに収めるけれど、今回はわけあって、私の顔が見えにくくなるようにそのままにした。

高須賀さまが私の肘に手を添える。

見目麗しい彼の顔が至近距離に迫り、私は目を閉じた。

キスは当然、する振りだけだ。

けれど次の瞬間、唇に柔らかい感触がして、私は思わず目を開ける。

「……んっ?」

うそ……⁉︎

高須賀さまと私の唇が触れ合っている。

驚きすぎて固まる私に、高須賀さまはしっかり五秒はキスを続けた。

傾けた顔をゆっくりと上げた高須賀さまは、艶を含んだ微笑を浮かべる。私はただただ、彼のその男っぽい瞳に釘付けになった。

本当にキスするなんてありえない。

だって私は、彼の本物の新婦じゃない。

私は彼と彼の新婦である川嶺沙絵(かわみね さえ)さまの、ただの担当のウエディングプランナーなのだ。
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