身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
人生は短い。明日、何があるかもわからない。

北瀬マネージャーのその言葉が、やけに胸に染み入った。自分の過去に思い当たる節があるからだ。もう後悔はしたくないという思いが湧き上がってくる。

確かに彼の言う通りだった。よくわからないもやもやには、きっと中身なんかない。私はただ逃げる口実を探していただけなのかもしれない。

「そうですね。何も気にせず、飛び込んできます」

吹っ切れた私に、北瀬マネージャーは安心した表情になる。

「うん。新婚生活、うまくいくといいね」

「はい」

そこで腕時計に視線を落とした北瀬マネージャーが、「そろそろ朝礼始めなきゃね」と、話に打ち切りを告げた。

私はすぐに仕事モードに切り替える。

今日は朝からぎっしり打ち合わせの予定があった。どのお客さまにも最高のプランを提案し、一生に一度の幸せな瞬間をプロデュースできるよう、全力で努めよう。私は胸の内で気合いを入れた。
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