身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
そうして仕事が終わったのは午後九時過ぎだった。

平日で結婚式の施行はなかったけれど、お客さまの急な来館もあり残業になったのだ。そもそも普段から定時に帰れることは滅多になかった。

あいりちゃんには、昼休憩に昨日の出来事をざっと話した。すると、「やっぱり世の中って漫画みたいにドラマチックなことが起こるんですね!」と大はしゃぎし、「私も今井先輩にあやかりたいです! 玉の輿!」と強く手を握られた。

しかも夕方にはあいりちゃんから館内中に話は広まっていて、顔を合わせた人みんなにうらやましがられた。そのたびに私は、まだ結婚すると正式に決まったわけではありませんと言い添えたけれど、誰もまともに聞いてくれなかった。

私服に着替え、あいりちゃんと従業員出入り口に向かうと、そこには昨夜と同じく運転手の山岡さんが高級車の前に立っていて、私をピックアップするために待ち構えていた。
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