身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「はい。ドレスコードはありますか?」

「特にないが、新商品の発表会だから、華やかなほうがいい」

「わかりました。私、ここへはまだあまりお洋服を持ってきていないので、自分のマンションに取りに帰ってきますね」

「? クローゼットの中を見ていないのか?」

首を傾げられ、つい私も同じ仕草をしてしまう。

「え?」

クローゼットとは、ここの私の部屋にあるもののことだろうか。

初日に菖悟さんに案内されたとき、ウォークインクローゼットだと聞いていたドアなら、私は一度も開けていなかった。特に仕舞うものがなかったからだ。けれどそれがどうしたのだろうか。

「あれは全部、紗衣のために用意したものだぞ」

「あれ?」

なんのことかわからない私は、ひとまず自分の部屋に向かった。

そうしてウォークインクローゼットの扉を開けた途端、仰天しそうになる。
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