身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
六帖くらいのスペースに、所狭しと品物が詰まっていたからだ。

洋服はざっと五十着以上はあり、バッグやジュエリーケースなども数えきれない量だった。

「どうしたんですかこれ……?」

「紗衣のために用意したと言っただろう。こういうのはよくわからないから、デパートの外商に頼んだんだが、好みではなかったか?」

手に取ってみると、どれもこれもハイブランドのもので、私は言葉を失った。

「やはり急ごしらえはよくなかったか」

「い、いえ、そうじゃなくて、すごく高級なものをこんなにたくさん……」

自分では絶対に手の届かないブランドばかりな上、私が持っている全部をかき集めたものよりずっと多かった。

「ドレスはこの中から気に入るものを着ればいい」

「こんなの、私の全財産をはたいても払えません……」

青ざめる私に、菖悟さんは苦笑いする。

「可笑しな奴だな。金を取るわけがないだろう。俺が勝手に用意したんだから」

「でも……」

「それより、紗衣はいつ向こうの部屋を引き払うんだ?」

< 68 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop