身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
早朝、目を覚ましたとき、私はまだ身じろぎできないくらいがっしりと、菖悟さんに包み込まれていた。

酔っぱらっていたわりに、私は昨夜の出来事を鮮明に覚えている。

羞恥に逃げ出したくなる内容が脳裏をよぎると、思わず「ひゃぁ……」と、小さく悲鳴を上げてしまった。

「……まだ早いだろう?」

片目を開けた菖悟さんは、私を抱き締めたまま、再び眠ろうとした。

私はなんとか首を捩りベッドヘッドの時計を確認する。

「はい、まだ五時半です。でもここはホテルで、一旦家に帰って出勤の準備をしなければいけません」

私も菖悟さんも今日は仕事があった。

「……ああ、そうか」

ようやく現実を思い出したらしい菖悟さんは、私の髪にキスをする。

「抱き枕が優秀でよく眠れた」

「それは何よりです……」

赤面しながらも、私も安眠できたのを感じていた。あんなに窮屈な体勢だったのに、本当に不思議だ。

菖悟さんはベッドを下り、スマートフォンでどこかに電話をかけた。

「すぐに秘書が着替えを持ってくるから、ここからそのまま出勤しよう」
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