身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
電話の相手は秘書さんだったようだ。彼の秘書さんは女性らしく、私の着替えも頼んだらしい。なんだか少しいたたまれなかった。

菖悟さんは私に悪戯な目を向けてくる。

「風呂、一緒に入るか?」

「なっ……、とんでもないです、お先にどうぞ」

私は引き攣った笑みを浮かべた。

「そうか、残念だ」

けれど菖悟さんは私をからかっただけらしく、あっさり引き下がるとバスルームに向かった。朝から心臓に悪い。

ほどなくして、菖悟さんの秘書さんが部屋にやってきた。

菖悟さんはまだバスルームにいるので、私が応対する。彼の秘書さんは、同性の私でも見惚れてしまうくらいきれいな女性だった。

すらっと背が高く、日本人離れした彫りの深い顔立ちで、もしかすると外国の血が入っているのかもしれない。前髪もすべてアップにしたポニーテールは、彼女の美しい輪郭をより引き立たせていた。

「こちら、菖悟さまよりご用命を承りましたお品物でございます」

紙袋をふたつ差し出された。片方を開けると、そちらは私の着替え一式で、すべて新品のようだった。もう片方には菖悟さんの分が入っているようだ。
< 81 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop