身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「お手数をおかけして申し訳ございません。わざわざありがとうございます」

私は丁寧にお礼を言った。正直とても気まずい。こんな早朝から、彼女に迷惑をかけてしまった。

けれど彼女は「造作もございません」と涼しい顔をしている。まるで菖悟さんからの無茶ぶりは日常茶飯事といった様子だ。

「水城、朝からすまないな。せっかくだから、一緒に朝食を摂っていくか?」

お風呂を出た菖悟さんが、彼女に声をかけた。けれど彼女は「いえ、菖悟さまのお支度が整うまで、ホテルのロビーで待たせていただきます」と辞退する。

彼女が部屋を出ていくと、私はふうと、小さく息をついた。あまりにも美人すぎて、緊張していたのだ。

「菖悟さんの秘書さん、美しすぎませんか?」

思わず口にすると、菖悟さんは首を傾げる。

「そうか?」

「そうですよ。菖悟さんと並んでると美男美女すぎて眩しくて、目がどうにかなりそうでした……」

「なんだそれ?」

苦笑いする菖悟さんにふと、どうしてあんなにきれいな人がそばにいるのに私なんかを気に入ったのだろうと疑問が湧いてきた。

身代わりで花嫁になったのがたまたま私だったからだろうか。それとも菖悟さんは単に女性の趣味が悪いのか。
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