身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
菖悟さんはぴしゃりと撥ねつけた。もちろん彼の言い分もわからなくはない。けれどたとえお客さまが優柔不断なのだとしても、私にできることなら叶えてあげたかった。

ほんの少し、私ががんばればいいのだ。

「北瀬は? ほかのプランナーは手伝ってくれなかったのか?」

「北瀬マネージャーは出張中で、プランナー仲間は声をかければもちろん手を貸してくれたと思いますが、みんなそれぞれ受け持っているお客さまがいるし、迷惑はかけたくないので……」

「どこまでもお人好しだな」

容赦のない物言いをする菖悟さんは、本気で呆れているようだった。彼にしてみれば、私のようなタイプは見ていて焦れるのだろう。

「もういい、早く風呂に入って寝ろ」

相容れない考え方の私に菖悟さんはため息をつき、自室に向かった。

私はその場に立ち尽くしてしまう。けれど自分がしたことに後悔はなかった。仕事に関しては、私は自分の信念を貫く。

両手で胸元を抑え、深呼吸して気持ちを切り替える。

そうして明日に備えるために急いで眠る準備をした。
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