身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
刻一刻と状況は悪化する。

本来なら今頃は、親族控室での挨拶や親族紹介を終え、高須賀さまと川嶺さまは挙式リハーサルに向かっている時刻だった。

マリヨン本館のロビーではもうすでに受付が始まっていて、結婚式の列席者がたくさん来館されている。少しの猶予もなかった。

「沙絵を探す必要はないです。どれだけの人に迷惑をかけるかも考えられず、この状況でいなくなるような彼女には、俺の妻は務まりません」

高須賀さまは川嶺さまのお父さまを一蹴した。その表情は激怒しているというより、呆れ果てている。高須賀さまは自身のプライドよりも、その立場から思うところがあるようだった。

「そうね。連れ戻して無理やり結婚させても、先が思いやられるわ。かわいい子だと思っていたのに、残念ね」

同意する高須賀さまのお母さまに、川嶺さまのお父さまが縋りつく。
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