その手をつかんで
蓮斗さんと幸せになる……心が大きく揺れ動く。

それでも花束に手を伸ばすのを躊躇う。ふと、周囲からの視線を感じた。

カフェの席は今、3割程度埋まっている。ここにいる客とスタッフが静かに私たちを見ていた。立った状態でプロポーズする姿は目立つ……。

注目を浴びていることに気付いた私は、注目の的から逃れたい一心で、花束を受け取った。
 
とりあえず早くに座らなくちゃ。立っているから目立つ……。

しかし受け取った瞬間、「わあ!」という感動する声がいくつかあがって、ハッとなる。

これって、受けたことになる?

戸惑う私の前で、蓮斗さんが嬉しそうな笑みを浮かべていた。


「ありがとう」

「えっ、あ……えっと、よろしくお願いします」


しどろもどろな返事をした私の顔は熱くなった。慌てて、腰を下ろす。

蓮斗さんも座り、自分のカップに注いだ紅茶を飲んだ。

ぼんやりとその動きを見ていた私の鼻腔を薔薇の香りがくすぐる。まだ抱えていた花束を改めて、見た。

何本あるのか正確な数は不明だけど、わりと大きい。


「きれいですね」
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