その手をつかんで
私は「あ!」と予定していたことを思い出した。


「コートを買う予定です。先週見て悩んでるのがいくつかあって、今日こそ決めようかと思っていまして」

「コートか、寒くなってきたものね。それ、俺も付き合っていい? どんなのを選ぶのか気になる」

「いいですけど……あ、蓮斗さんが選んでくれます? 私、優柔不断で決めるのに時間がかかっちゃうんですよ」

「うん、いいよ」


蓮斗さんは快く私の買い物に付き合ってくれた。

私は気に入っているブランドの店で悩んでいる二つのコートを試着して、蓮斗さんに見てもらう、

その結果……。


「形も色も違うし、どっちも明日花に似合っていた。恋人になれた記念のプレゼントだよ」


両方、蓮斗さんが買ってくれた。

そんなつもりで、ショッピングに付き合ってもらったのではない。でも、私が支払うよりも先に彼が支払いを済ませていた。


「ありがとうございます。大事にしますね」

「素直な明日花がかわいすぎて、やばいな」

「ええっ? そんなこと……」

「そんなこと、あるよ。最近は感情を出さない姿しか見てなかったから、今は嬉しい」
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