その手をつかんで
「蓮斗さん。それ、もしかして……」

「ん? ああ、さっきのワンピース。在庫があったから、新品のにしてもらったよ」

「買ったんですか?」

「うん、そう。盗んでないよ?」


さすがに盗んだとは思わない。だけど、買ったとも思わなかった。


「あの、私にですよね?」

「もちろん。明日花に着てもらうために買ったよ」

「蓮斗さん、買いすぎです。そんなに買わないでください」

「もう買えない? 他にバックとか靴も見たいのに。今は、何でもしてあげたくなる気分なんだよ。明日花、かわいいから」


彼はどうやら浮かれているらしい。私も心が弾んでいるから、気持ちはわかる。 

だけど、かわいいから何でも買うとは、理解しがたい感覚だ。プロポーズを受けたけど、金銭感覚の違いに早まったかもと後悔しそうになる。


「蓮斗さん、本当に甘やかさないでください。困ります」

「えっ、困る? 喜ぶじゃなくて? 普通買ってあげれば喜ぶかと……」


蓮斗さんは蓮斗さんで、私が困るというのを理解出来ないようだった。
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