その手をつかんで
ここ、会社だけど?

こんなところで……もし誰か来たらどうするの?

私の戸惑いはまったく伝わらなくて……「ダメ」と言おうと僅かに口を開けると、舌が滑り込んできた。

ええっ?

違う!
そうじゃない!

より深くなっていくキスは気持ちいい……じゃなくて……!


「ん、んんっ……れ、んとさんっ」

「ん?」


やっと私の拒絶が伝わったようで、蓮斗さんが離れた。だけど、彼は不思議そうな顔をする。

彼の唇には私のリップが移っていた。直視するのが恥ずかしく、目を逸らす。


「会社ではダメ……です」

「俺たちしかいないよ? ふたりだけならいいって言ったよね?」

「えっ? でも、いつ誰が入ってくるかわからないから」

「うん、ドキドキするよね」

「ええっ!」


もしかして、誰かに見られるかもしれないというスリルを楽しんでいる?

確かにスリルがあると、よりドキドキする。

しかし、こんなドキドキを求めていない。


「朝から明日花に触れられたら、1日がんばれるんだけどな」

「んー、でも、心臓に良くないです」
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