その手をつかんで
やはりいいことではなかった。

予想外過ぎて呆れてしまうが、どうしてそんな提案をするのだか……。


「瑠奈、何言ってるのよ? 私みたいのが蓮斗さんとつり合うはずがないでしょ……」


蓮斗さんも同じことを思っているだろうと、彼を見る。しかし、「いや」と考え込むように腕組みした。

それから、ポツリと呟く。


「つり合うとか、どうかは関係ない。でも……うん、そうだな、悪くはないかもしれないな……」


瑠奈が「でしょ?」と目を輝かせる。

ええっ?

待って……悪くないって、どういうこと?
瑠奈の提案を前向きに考えようとしているの?

私と蓮斗さんが……って、あり得ないから……。

心の中で否定する私を、蓮斗さんが真剣な眼差しで見た。

何かを決心したような表情に、私は思わず後ずさる。

何を言おうとしているの?

聞いてはいけない……と脳内のどこかから声が聞こえて、私は両耳を手で押さえた。


「明日花、どうしたの?」


外部からの音を遮断した私は瑠奈の口の動きを読み取り、左右に首を振る。

蓮斗さんが私の正面にやって来て、押さえていた手を掴んだ。


「聞いてくれないかな?」

「え、あ、う……はい……」
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