その手をつかんで
おろおろしながらも、必死で訴えた。お試しとはいえ、簡単には承諾できない。

瑠奈が困った顔で、蓮斗さんを見る。大いに困ってるのは、私だというのに。

この兄妹はどうして、おかしなことばかり言うのよ……。


「うん、こっちから見て違うと思うかもしれない。だから、お互いを見極めるためにまず……そうだな、食事をしよう。どうかな？」

「それは、お試しのお付き合いでの食事ですよね？」

「もちろん……ああ、そうだ。誠意を見せるために、明日花さんと付き合っている期間は他の人と会うことは絶対しないから……明日花さんのことだけを考えていたい」

「わ、私のことだけ？」


蓮斗さんと結婚したいと願う女性はたくさんいる。そんな魅力的な人が私だけを想う？

いいの？ そんなことで……。


「付き合っている人のことだけを考えるのは当たり前のことだよね？ 明日花さんも俺のことだけを考えてもらえるとうれしい。できる？」

「私も……はい、わかりました」

「よし、交渉成立だね」
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