その手をつかんで
杉田くんが急いで出ていった理由が判明した。


「別に怒ってはいなかったけど、ちょっとムッとしていたから、怒ってるように見えたのかもね」

「そうかもしれないですね。ムッとしたなんて、まさか嫉妬ですか?」


蓮斗さんは食べていた料理を咀嚼して、動きを止めた。


「冗談ですよ。そんなことくらいで、嫉妬しないですよね」

「そんなことって?」

「えっ? えっと、他の人と話をするくらいで」

「相手が女性ならなんとも思わないけど、男だとね……明日花の声も弾んでいたし」


私の冗談のつもりで言ったまさかを、蓮斗さんは冗談と受け取らなかった。

想定外の返しをされて、目をパチクリさせる。

本当に嫉妬したというの?


「仕事の話なら仕方ないと思うけど……いや、それでも、ふたりが仲良くしているのは、おもしろくないな」

「杉田くんは同級生だから、話しやすいですけど、仲は特別良くないですよ。それに私が一番仲良くしたいのは、蓮斗さんですからね。蓮斗さんの婚約者でいられることで、毎日楽しいんです」
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