その手をつかんで
「ダメじゃないけど、いや、こういうのってさ、なんか照れちゃうね。どんな顔したらいい？」


初めて見る照れ顔も撮りたくなったが、それは我慢して、姿勢よくする漣斗さんに「笑ってください」とリクエストした。

瑠奈や他の友だちとはお互いを撮り合うことが多いから、私にとっては普通のことだったけど、漣斗さんの感覚は違ったようだ。

私の無茶ぶりに応じて笑顔を見せる彼は優しい人だと、改めて感じる。


「いい感じに撮れましたよ」

「見せてもらってもいい？ ……うわっ、胡散臭い顔してる……」

「えー、そんなことないですよ。ちゃんと蓮斗さんの人柄が滲み出ているというか、優しそうな顔しています」

「そうかなー」


蓮斗さんに見せたあと、再確認する。うん、素敵な写真になっている。さすがに、素敵とは私まで照れてしまうから言えないが、大事にしようと思った。

スマホをバッグに入れて、ケーキを食べる。


「わあ、美味しいです！　えっ？　ちょっと蓮斗さん、今撮りました？」

「うん、とってもかわいく撮れたよ」

「不意打ちで撮るなんて、ひどいです」

「いいじゃない？ 明日花も俺を撮ったんだから。俺も明日花を撮りたくなった」
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