その手をつかんで
「それは悔しいし、悲しかっただろうね。でも、酷なことを言うかもしれないけど」


蓮斗さんは途中まで言いかけて、コンビニの駐車場に車を止めた。

コンビニからちょうど出てきた男女に一瞬だけ目を向けてから、私を見る。


「この先、その先輩たちがいる限り、明日花の案は採用されないだろう。三人で決めているといっても、決定権は先輩たちにあるんでしょ?」

「はい、そうです。やはりこのままでは、変わらないですよね」


私も彼と同じことを思っていた。あのふたりがいる限り、状況が変わることはない。

それでも、耐えなくてはいけないのか……。まだ勤めたばかりという理由だけで。


「明日花、もし転職を考えていて……うちの会社で働けるとしたら、選択肢のひとつに入れる?」

「蓮斗さんの会社で?」

「うん、うちの社員食堂。数か月前からメニューがマンネリ化しているせいか、利用する社員が減っていてね。どうしたのかと総務に確認したらそこにいる栄養士が退職を考えていて、やる気がなくなったらしい」
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