その手をつかんで
「退職でやる気がなくなるんですか」

「プライベートのことが原因らしいから詳しくは聞いてないけど、近々辞めるから代わりになる人を採用する予定。現在どんな段階なのか聞いてみるけど、明日花が働きたいというなら紹介するよ」

「紹介してもらえるなら、とてもありがたいお話です。自分で探すとなると大変だなと思っていたので」


蓮斗さんは「ちょっと待って」と言ってから、スマホを操作する。それから、誰かに電話をかけた。

聞こえてくる内容から、今話していた採用の件だとわかる。

素早い行動に驚きつつ、頼りになる彼を眺めた。キリッとした横顔がかっこいい……。


「人事課に同期がいてね。その人に今聞いたら、まだ募集前だって。だから、募集をしないでほしいと伝えた。あとで直接明日花のことを話すから少し待っていてくれないかな?」

「はい、ありがとうございます」


蓮斗さんの一存で決定できることではないから、一応採用試験を受けることになるだろうと言われた。

簡単に再就職できるとは思っていない。でも、試験を受けさせてもらえるだけでもうれしい。

蓮斗さんからの連絡を待つことにした。
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