その手をつかんで
「では、いろいろとありがとうございました。帰り道、お気をつけてくださいね」

「うん、こちらこそありがとう」


お別れの挨拶をしたが、蓮斗さんも車から降りてきた。


「あの、どうして?」

「車をここに止めさせてもらったから、飲み物買おうかなと思ってね」

「えっ? ああ、大丈夫ですよ。私、牛乳買って帰るので」


彼は真面目な人だ。コンビニの駐車場を待ち合わせに使う人は、少なくない。

でも、場所を借りたからと律儀に買い物する人はそれほどいないかも。


「じゃあ、一緒に入ろうか。少しでも長く明日花といられる」


隣に並んで、顔を緩める蓮斗さんを見た。まさか喜ばれるとは……。

彼が私をどう思っているか、ハッキリとはわからない。お試しでどうかと言われたときは、打算的な考えを持つ人なのかと思ったが、今日は好意をじわじわと感じた。


今のように喜びをあらわにされると、戸惑ってしまう。

だから、話題を変えた。


「蓮斗さんでもコンビニ行くことがあるんですね」


慣れた手つきで、ペットボトルが陳列されているショーケースを開けて、一本取り出していた。
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