その手をつかんで
「あー、瑠奈に話してなかったな。実は社員からの評判が良くないんだよ。メニューのマンネリ化が原因なんだけどね」

「マンネリ化? どうしてそんなことになっているの? 社員が飽きないように毎月変えるようにしていたよね?」


瑠奈も親の会社を大事に思っているのは、学生の時から感じていた。娘という立場なりに経営状態も把握していて、特に社員食堂には興味を持っていたようだ。

瑠奈もその会社で、働くのかと聞いたことがある。卒業後すぐに結婚するとも聞いていたけど、働きながら主婦もするのかと……だけど、返事はノーだった。

栄養士の瑠奈が働いていたら、現在の状況も違っていただろうに。

蓮斗さんは、問い詰める瑠奈に説明する。


「栄養士がプライベートで忙しく、新メニューを考える余裕がなかったそうだ。調理師も変えなくてもいいだろうと判断していた。総務課の担当者がしっかりチェックをしていれば社員の足が遠のくことはなかったのだろうが、担当者が異動で変わったこともあって、そこまで手が回らなかったらしい」
< 45 / 180 >

この作品をシェア

pagetop