その手をつかんで
「その栄養士さん、プライベートを大事にしたい気持ちはわかるけど、無責任だね。ちゃんと仕事はしてもらわないとね」

「そうさ。でも、来月に退職するんだよ」

「クビにしたの?」

「まさかそんなことで、クビにはできないよ。プライベートのことで、退職する予定になっている。そこで、明日花」


蓮斗さんは瑠奈から私へ視線を移した。いきなり名前を呼ばれて、肩がビクッと揺れる。


「私? えっと……」

「人事に話をしたら、ぜひとも試験を受けていただきたいって。俺からの推薦があるから、余程じゃない限り、採用できそうだよ」

「ありがとうございます。試験、受けます!」


私が頭を下げると、瑠奈が抱きついてきた。相変わらず瑠奈からは、フローラルな甘い香りがする。


「明日花ー、良かったね! 私も明日花がらくになれる方法がないかと考えていたけど、やっぱりお兄ちゃんに相談して良かった。今度こそ明日花の力を発揮できるよ。がんばって!」

「ありがとう。でも、まだ決定じゃないから……」

「大丈夫! 私も推薦するから!」
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