その手をつかんで
どこからどう見て、杉田くんにときめいていると思ったのか……,。

私は今、近寄る蓮斗さんにドキドキしているというのに。


「そう見えたのは、俺の勘違いかな」


彼は顔を私よりも下げて、上目遣いで見た。内心を探ろうとしている様子に、心臓がドクンと大きく跳ねる。


「か、勘違いですよ。杉田くんのことは、なんとも思っていないです」

「じゃあ、俺のことは?」

「えっ?」


蓮斗さんのこと?

予想外の問いに、目が点になる。

脳内は必死で動いているが。

蓮斗さんのこと、蓮斗さんのこと、蓮斗さんはえっと……良い人だ。

でも、良い人という答えで納得してくれないだろう。

では、どう言えば?

思考を巡らせていると、蓮斗さんはしびれを切らしたようで、別のことを聞いてきた。


「俺のことだけを考えてくれている?」

「もちろんです! 今日も起きた時に考えました」

「へー、どんなふうに」


座り直した蓮斗さんは意地悪そうな笑みを浮かべて、私の髪を指でくるくるする。
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