その手をつかんで
髪に触れられたのも初めてだけど、こんな顔をする蓮斗さんを見るのも初めてだ。

これはいったいどういう状況?

心がずっと騒がしくなっていて、困る。

シトラス系の爽やかな香りがほのかに漂ってきて、それもまた心臓によくない。

彼からの質問がさらに増えないよう、私は困惑しつつも口を開く。


「どんなって……今日会えるんだなと」

「俺に会えるのを楽しみにした?」

「はい」

「俺も明日花に会えるの、楽しみにしてたよ。これからは毎日顔が見れるね」


嬉しそうに微笑む彼を見て、私の頬は熱くなった。

確かに同じ会社だから会おうと思えば、毎日会える場所にいる。

でも、専務室にいる蓮斗さんと顔を合わせる機会は毎日あるものなのかな?

普通に考えたら、専務が社員食堂を頻繁に利用するとは思えないし、社員食堂にいる私が専務室に出入りしないと思う。

私たちはどこで毎日会うのだろう?

心の中の疑問が届いたらしく、彼が答えをくれた。


「勤務前に毎朝ここに来て。明日花の顔を朝に見れたら、一日がんばれるからね」

「はあ……わかりました」
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