その手をつかんで
どうしよう、やはり受けるべきではなかった?

今さら断れないし、困ったな。

でも、食事だけを楽しもうと言ってたから、大丈夫かな。

それよりも、早くメニューを考えないと!

たかが食事くらいで、いつまでも悩んでいないでやるべきことをやろう。

集中してやっていたら、いつの間にか終業時刻になりかけていた。


「野崎さん、そろそろ終わりにしてね」

「うん」


杉田くんに言われて、片付け始める。

部内を見渡すと、同じように片付けている人が多くいた。あまり残業することのない部署のようだ。

杉田くんと総務部のフロアを出ようとした時、蓮斗さんがやってきた。彼は近くにいる杉田くんをチラッと見る。


「野崎さん、お疲れ様」

「お疲れ様です」

「帰るところ?」

「じゃあ、行こうか」


蓮斗さんは話しながら、私の持つバッグに手をかけた。

私と杉田くんの「えっ?」という驚きに声が重なる。

蓮斗さんは訝しげな顔をした。


「どうした? あー、杉田くんもお疲れ様」


杉田くんは自分に目を向けられて、姿勢を正した。
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