その手をつかんで
蓮斗さんの返事にゆかりさんの目がつり上がった。そして、私を指差す。


「どうして? この子との時間はあるのに、私との時間はないと言うの?」

「俺の時間は明日花のためだけにある。ゆかりさんに限らず、他の女性とふたりだけで食事はしないよ」

「この子とどういう関係? 瑠奈ちゃんのお友だちというだけでしょ?」


確かに私は瑠奈の友だちだ。間違ってはいない。でも、蓮斗さんとの関係はそれだけとは言えないかも……。


「俺の婚約者だけど」


えっ?


「えっ? これが婚約者? いつの間に?」


この子からこれに格下げされた……。しかし、私も驚きだ。

婚約した覚えはない。

蓮斗さんはため息をついてから、私の肩を抱く。


「人の大事な婚約者をこれと、言わないでもらいたいな。つい最近だよ。わざわざ伝えなくてもいいかなと思ったけど、そういうことだから今後は誘わないでもらえる?」

「嘘でしょ……そんなの許さない」

「俺と彼女の問題だから、ゆかりさんの許可は必要ないよね。話は以上だから、帰ってくれないかな」
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