その手をつかんで
この日の夜、寝る前に婚約者について考えた。

何度考えても、どうして婚約者に? と疑問になる。

蓮斗さんは独占力が強いようだけど、仮で束縛されるのは、納得いかないような……。

やはり、仮でも婚約者になれないとハッキリ言わなくては!

明日、専務室に行ったらます伝えよう。

でも、明日の朝では間に合わないかもしれない。もう誰かに話していたら……蓮斗さんだけではなく、ゆかりさんか広げる危険性もある。


「遅くにすみません」

『全然構わないよ。明日花から電話くれるなんて、うれしいね』


喜ばせようと思って、かけたのではない。肩をすくめた。


「あの、婚約者のことなんですが」

『ああ、そうだ。ちゃんと婚約者だと認識してもらうよう指輪を用意しようと思うんだ。サイズ、いくつ?』

「え? 仮なのに指輪なんていらないですよ。受け取れません」

『そう? 残念だな。俺のものというしるしにしたかったけど、仕方ない。今日は初日で疲れたよね? ゆっくりおやすみ』

「はい、おやすみなさい」


通話を終えて、ハッとなる。私は何のために電話したのだか……。
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