その手をつかんで
数日後、瑠奈からうちに来てとお願いのメッセージが届いた。切羽詰まった感じがして、首を捻った。

どうしたのだろう?

育児疲れかな?

少しでも瑠奈が元気になれるよう、シフォンケーキを焼いて持って行った。

咲里奈ちゃんを抱っこして出迎えた瑠奈の表情は、固い。やはり何かあったように思える。


「これ、シフォンケーキだけど」

「ありがとう。あとで、食べるね。明日花、ごめんね……」

「何で謝るのよ? 大丈夫よ、暇だから。瑠奈の顔も見たかったしね」

「うん……」


呼んだことを気にするなんて、瑠奈らしくない。慣れない育自で疲れているのかも。

靴を脱ぐ時、端ある黒い革靴が視界に入った。旦那さんのにしては、少々落ち着いた感じというか……年配の人の靴に見える。


「旦那さんもいるの?」

「うん……それとね」


気まずそうにする瑠奈に「うん?」と聞くと、涼輔さんが来た。

涼輔さんは、咲里奈ちゃんの頭を撫でる。


「瑠奈、お父さんが待ってるよ。明日花さん、いらっしゃい」

「おじゃまします」
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