その手をつかんで
今、おとうさんと言ったけど、瑠奈のお父さん?

遊びに来ているのかな?

もしかして、お父さんが急に来たから、私を招き入れるのに躊躇っているとか?

何か話したいことがあるのかと思ってたけど、お父さんがいて話しづらいなら日を改めてもいい。

しかし、言うタイミングを逃し、私たちはリビングへ入った、

瑠奈が私を紹介する。


「お父さん、こちらが野崎明日花さん」

「どうも、瑠奈の父です。いつも瑠奈がお世話になっているそうで。仲良くしてくれて、ありがとう」


口から出る言葉は柔らかいけど、目が笑っていない。

私を紹介するために呼んだとは思えないけど……まさか私はお父さんによって、呼ばれた?

動揺で声が震えてしまう。


「いいえ、あの、私こそ瑠奈さんと仲良くさせてもらって……良かったと思います」


こういう場合、どう挨拶したらいいかわからなく、突然のことに戸惑った。

言い方を間違えたかもと思った時は、遅い。瑠奈のお父さんの表情が険しくなったあとだったからだ。
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