その手をつかんで
不満が顔に出ていたようで、蓮斗さんは苦笑した。
「そんな顔をしないでもらえると、ありがたいんだけど」
「すみません、愛想笑いするのは苦手なので」
「心から笑ってくれるとうれしいけど、まあムリかな」
「はい……」
縮まっていた距離を開けるためにも、蓮斗さんの言葉に心が揺れてはいけない。切なさそうに見つめる瞳から、目を逸らした。
専務である彼と親しく話さないために。
「今日のもおいしかった。明日もまた来るね」
蓮斗さんは立って、空になった食器をのせたトレイを持つ。
「いいえ、毎日来なくても……」
「飽きない味だから、毎日食べたいんだよ。野崎さんが来てくれて良かった」
「ありがとうございます」
彼は私がここにいる価値を見出してくれる。今月のメニューは私の考案したものではないが、いくつか味付けをアレンジしていた。
それを話していたので、おいしいという感想は素直にうれしい。
でも、やはり毎日来られるのは困る。
社食を出て行く蓮斗さんの後ろ姿を見ながら、ため息をつく。
ふと彼が振り返り、ドキリと心臓が跳ねた。目が合い、今度は逸らせない。
「そんな顔をしないでもらえると、ありがたいんだけど」
「すみません、愛想笑いするのは苦手なので」
「心から笑ってくれるとうれしいけど、まあムリかな」
「はい……」
縮まっていた距離を開けるためにも、蓮斗さんの言葉に心が揺れてはいけない。切なさそうに見つめる瞳から、目を逸らした。
専務である彼と親しく話さないために。
「今日のもおいしかった。明日もまた来るね」
蓮斗さんは立って、空になった食器をのせたトレイを持つ。
「いいえ、毎日来なくても……」
「飽きない味だから、毎日食べたいんだよ。野崎さんが来てくれて良かった」
「ありがとうございます」
彼は私がここにいる価値を見出してくれる。今月のメニューは私の考案したものではないが、いくつか味付けをアレンジしていた。
それを話していたので、おいしいという感想は素直にうれしい。
でも、やはり毎日来られるのは困る。
社食を出て行く蓮斗さんの後ろ姿を見ながら、ため息をつく。
ふと彼が振り返り、ドキリと心臓が跳ねた。目が合い、今度は逸らせない。