その手をつかんで
なんだろう?


「今この場で、どっちかを選んでくれない?」


予想外の提案に伊藤さん以外の三人が呆けた。

この場で選ぶ?

この人、何を言ってるの?


「ちょっと、ちょっとー。そんな焦らなくてもいいじゃない? 野崎さん、困ってるよ」


小川さんの言葉に私は、うんうんと頷く。いきなり選べと言われ、ものすごく困った……。

だけど、伊藤さんは引かない。


「野崎さん、深く考えないでいいよ。付き合うならこっちかな? そんな軽い気持ちでいいから、選んでよ。ってか、俺を選んでください」


伊藤さんは頭を下げて、手をこちらに出した。


「伊藤さん、ずるいです。野崎さん、俺といる方が絶対楽しいと思うよ。俺と付き合ってください」

「え、杉田くんまで……」


杉田くんも伊藤さんと同じように頭を下げて、手を私の方へ向けた。

これは、いったいどうしろと?

どちらかの手をつかめと?

頭が混乱してしまい、今度こそ小川さんに助けを求めた。
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