その手をつかんで
小川さんは頭を下げるふたりにキョトンとしてから、私に向かって肩をすくめた。


「選ばないと収拾がつかないようね。困った人たちだけど、どっちか選んでみる? 今お付き合いしている人がいないのなら、とりあえずお試しで付き合ってみてもいいんじゃない?」


ここでもまたお試し?

もうお試しの付き合いは、こりごりだ。

しかし、この人たちは私がお試し交際していたことを知らない。

だからなんだろう……伊藤さんが小川さんの言葉に納得して、さらに付け加えたのは……。


「お試しか、それでもいいな。俺と杉田の両方とお試しするのでもいいんじゃないの? 交代制にしてもいいしね」

「俺はそういう中途半端なのはイヤです。お試しだなんて、野崎さんに失礼ですよ。誠意を持って、真剣に向き合っているように感じられないじゃないですか」


小川さんが「ほー」と感心したように頷く。  


「真面目な杉田くんらしい考えね。誠意が感じられないといえば、そうよねー。んー、じゃあ、やっぱ今ここで選ぶ?」


私が決断しなければいけないのはわかっているけど、どうしよう。
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