その手をつかんで
だけど、お試しはイヤだ。
「すみません、お試しは出来ません。それと、今は誰かと付き合うことを考えられなくて……ごめんなさい」
断りながら、杉田くんと伊藤さんを見る。どちらの手も取れない。
ふたりはテーブルの上で伸ばしていた手を引っ込めた。
杉田くんが恨めしそうに伊藤さんを横目で見る。
「今夜申し込むつもりはなかったのに……少しずつ距離を縮めて、仲良くしていこうと思っていたのに……伊藤さんがいきなり申し込んで、焦らせるから」
「俺のせいだと言うのかよ?」
「そうですよ。いきなり過ぎです」
「だったら、杉田は言わないで俺が振られるのを見ていたら良かったじゃないか」
またもや言い合いになるふたりを小川さんが「まあまあ」と仲裁する。
「ふたり揃って振られたんだから、どっちが悪いとかないでしょ? いつまでもそんな話しないのよ。野崎さんかまたまた困ってるじゃないの」
小川さんに諭されて、ふたりはきまり悪そうな顔をした。
私は再度謝った。
「ごめんなさい」
「いや、悪いのは野崎さんじゃないから」
「そうだよ、野崎さんは悪くないよ。困らせて、ごめん」
「すみません、お試しは出来ません。それと、今は誰かと付き合うことを考えられなくて……ごめんなさい」
断りながら、杉田くんと伊藤さんを見る。どちらの手も取れない。
ふたりはテーブルの上で伸ばしていた手を引っ込めた。
杉田くんが恨めしそうに伊藤さんを横目で見る。
「今夜申し込むつもりはなかったのに……少しずつ距離を縮めて、仲良くしていこうと思っていたのに……伊藤さんがいきなり申し込んで、焦らせるから」
「俺のせいだと言うのかよ?」
「そうですよ。いきなり過ぎです」
「だったら、杉田は言わないで俺が振られるのを見ていたら良かったじゃないか」
またもや言い合いになるふたりを小川さんが「まあまあ」と仲裁する。
「ふたり揃って振られたんだから、どっちが悪いとかないでしょ? いつまでもそんな話しないのよ。野崎さんかまたまた困ってるじゃないの」
小川さんに諭されて、ふたりはきまり悪そうな顔をした。
私は再度謝った。
「ごめんなさい」
「いや、悪いのは野崎さんじゃないから」
「そうだよ、野崎さんは悪くないよ。困らせて、ごめん」