オオカミ社長の求愛から逃げられません!
男の子の無垢な発言に、ギョッとしている。だけどその顔もまた美しくて、周りにいたマダムから、うっとりしたようなため息が聞こえてきた。
どこかのブランドだと思われるスーツがすごく良く似合っていて、さらっと艶のある黒髪は、横に流しているのがお洒落。これはため息もつきたくなる。
「ただの通りすがりのおじちゃんだ。もっと欲しいならここにあるの全部買うか?」
「えー全部!? すごーい」
男の子は、ぴょんぴょんとその場で跳ねながら喜んでいる。
いやいや。冗談なのか本気なのかわからないけど、全部買い占められたら困ります。と、心の中で冷静に突っ込んでみる。
杉本さんは思いがけない彼の登場に、仕事そっちのけで折原くんをばしばしと叩きながら、女子高生みたいにキャーキャー叫んでいた。
「早くしてあげて」
「あ……はい」