オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「あぁ、わかってる」
「では、急ぎましょう」
引き延ばせないって……まるで何かから逃げてるみたいな言い方。
「こんなところで時間稼ぎしても無駄です。ここまできたら後には引けないんです。ふらふら歩いていないで行きましょう。先方の方も会長もお待ちです。腹をくくってください」
「日野、俺は決めたよ」
社長が目を伏せ、深刻そうに言う。しかもいつの間にかお店の前で話す彼らに注目が集まっていた。
でも無理もないかもしれない。イケメンが感慨深そうにしている姿は絵になるから。とはいえ、私には関係ないこと。
彼のオフィスは杉本さんが知っているだろうし、後でお金を持っていけばいいか。そう思い、いまだ八神社長をウルウルした瞳で見つめる杉本さんに声をかけた。
「杉本さん、私両替に行ってきますね」
「待て」