オオカミ社長の求愛から逃げられません!

静まり返った住宅街を歩く。切れかかった外灯が、チカチカと私たちの影を映していた。

「八神社長は明日は朝早くないんですか?」
「明日はそんなに早くないよ。それよりさ、その社長っていうのやめない? 仕事してるみたいで、やだなー。晴久でいいよ」
「そ、そんな名前でなんて呼べません」
「里香はシャイだなぁ。まぁそこも可愛いけど」

か、可愛い……、

ぷしゅーっと頭のてっぺんから湯気が出そうになる。

さらっと甘いことも言っちゃう八神社長とは家柄以外にも、差がありすぎる。

ほぼ恋愛経験0の私にはどの言葉も刺激的過ぎて……。心臓壊されちゃいそう。きっと今まで綺麗な彼女がたくさんいたんだろうな。

「じゃあ晴くんとか、晴久さんとかでいいよ。ちょっと特別感味合わさせてよ」
「特別感って……」

まだ特別な関係ではないような。


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