オオカミ社長の求愛から逃げられません!


「どれも高級店のばかり」
「昨日ごちそうしてもらったお礼。好きなの選んで。なんなら、全部でもいいよ」
「お礼だなんて。差がありすぎますよ」

そう言ってクスクス笑っている。

まぁお礼なんてただの口実で、こうやって二人になりたかっただけ。きっと彼女は気が付いていないだろうけど。

「じゃあ、お言葉に甘えて。これにします」

彼女が指さしたのは寿司。しかも一番安いものだった。謙虚というか、欲がないというか。俺に気持ちに付け込んでわがままを言えばいいのに。バッグや宝石をねだったりしてもいいのに。

わがままな女性は苦手だと思っているのに、里香にだけはこんな感情を抱く自分は、かなり矛盾しているとは思う。それだけ彼女を特別視しているのだろう。

それから二人きりで昼食を食べた。

彼女は終始あの笑顔見せてくれ、俺は寿司どころじゃなかった。

「はぁ、お腹いっぱいです。美味しかった」
「それはよかった」
「あ、そうだ。私デザートもってきたんです。三日月堂の一口まんじゅう」

目を輝かせながらそれを俺に差し出す。彼女が和菓子が大好きなことはこの前でよく分かった。いつか老舗菓子店が並ぶ京都に行って、美味しい和菓子をたくさん食べさせてあげたい。もっと笑顔にしてあげたい。

気が付けばそんなことばかり考えていた。

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