結婚するのがイヤで家出したらクラスの男子と同棲することになった話【11/16番外編2追加】
「だから言ったでしょ。仁葵ちゃんに文句を言うような人は、たぶんいないって」
「でも、どうして? 私たち、付き合うそぶりも全然なくて、急なことだったのに」
「仁葵ちゃんに勝てるとは思えなかったからじゃない?」
勝てる? いったい何で?
「私、ケンカなんてしたことないよ?」
人を殴ったり蹴ったりなんてしたことは一度もないし、格闘系のスポーツも痛そうでとても見られないくらいだ。
剣馬は将来を見据えてたくさんの格闘技を習っていたけれど、その練習風景をのぞきみただけで倒れそうになったことをよく覚えている。
私は本気で言ったのに、狼くんは小さくふき出した。
「ケンカか! それは俺もしてほしくないなあ」
肩をふるわせてまで笑う狼くんは珍しくて、その顔をまじまじと見てしまう。
普段無表情に近い狼くんだからこそ、こういう表情の変化がまぶしくて目が離せなくなる。