結婚するのがイヤで家出したらクラスの男子と同棲することになった話【11/16番外編2追加】
入ってきたのは、狼くんじゃなかった。
長く真っすぐな黒髪が印象的な、きれいな子だった。
透けるような白い肌に、猫みたいに目尻がきゅっと上を向いた瞳。
同い年か、少し年下くらいだろうか。
白いワンピースからのびる手足は、いまにも折れてしまいそうなくらい細くて、頼りなげだ。
「……狼は?」
「え……」
「狼はいないの?」
狼くんのことを、呼び捨てにする女の子。
もしかして、狼くんの姉妹?
でも狼くんからそういう話は聞いたことがない。
それに家族なら、狼くんのおばあさんの快気祝いに行っているはずだ。
じゃあ、この子はまさか――。
心臓がうるさい。
胸の苦しさに耐えていると、足元に柔らかな感触があった。