結婚するのがイヤで家出したらクラスの男子と同棲することになった話【11/16番外編2追加】
「俺は……すまん。どうしても、三船であることを捨てられない」
「何言ってるの。別に捨てなくていいって。花岡に仕えることが、剣馬の誇りなんでしょ?」
小さな頃から数えきれないくらい聞いたセリフを言ってやる。
笑ってくれるかなと思ったけど、剣馬は泣き笑いみたいな顔をして、首を振った。
「本当は、俺がお前を……」
大きな手が、私へと伸びてくる。
でもそれは私の頬に触れるか触れないかのところで、ぴたりと止まった。
「剣馬……?」
「……何でもない。忘れてくれ」
伸ばしかけた手をにぎりしめると、剣馬は私に背を向けた。
「早く目、冷やせよ」
それだけ言うと、何かを強引に振り切るように、足早にエントランスから出ていっく。
何か声をかけなきゃいけない気がしたけど、結局私は幼なじみの背中にかける言葉を見つけられずに見送った。