結婚するのがイヤで家出したらクラスの男子と同棲することになった話【11/16番外編2追加】
涙をこぼし、美鳥さんは踵を返すと庭園を走り去っていった。
彼女に言われて私も傷ついたけど、恨む気持ちにはどうしてもなれない。
失恋の痛みを、私ももう知っているから。
「……ごめんね。また仁葵ちゃんに嫌な思いさせた」
「ううん。私は、全然。美鳥さん、大丈夫かな……」
「そこであいつの心配をしちゃうところが、仁葵ちゃんだよね。ほんと、心配でほっとけない」
苦笑すると、狼くんはなぜかおもむろに私の前で膝をついた。
スーツが汚れちゃう、と心配する私の左手を取り、成長して色味の落ち着いた瞳を細める。
「ちょっと気が早すぎて、引かれるかなとも思ったんだけど……」
そう言って狼くんが取り出したのは、赤く艶めく小さな箱だった。