結婚するのがイヤで家出したらクラスの男子と同棲することになった話【11/16番外編2追加】
「ちょっとどけてくれる」
「あっ。飛鳥井くん?」
女の子たちの間を抜けて、仁葵ちゃんの元に向かう。
俺の狭くて小さい心がイライラしていた。
「全部持ちます!」
「えっ」
「貸してください!」
「あ、ありがとう? でもそんなに重くないから大丈――」
「俺が持つよ」
仁葵ちゃんの手から、何かの資料の束をひょいと奪う。
驚いた仁葵ちゃんと、しまったという顔の男が俺を見た。
「狼くん!」
「これ、教室まで運べばいいの?」
「そうだけど、私自分で持てるよ?」
「いいからいいから」
俺がじろりと男を睨むと、相手は青い顔で「それじゃ、俺はこれで……」とぼそぼそ言いながら逃げるように去っていった。
顔は覚えたぞ。
仁葵ちゃんに近づく野郎として要注意リスト入りだ。