結婚するのがイヤで家出したらクラスの男子と同棲することになった話【11/16番外編2追加】
髪を乾かしていると、ソファーの上のスマホが小さな音を立てた。
画面に表示されるポップアップには【美鳥】の文字。
また、日本に帰るから相手をしろという催促だろう。
幸い仁葵ちゃんはドライヤーの音でスマホの通知音には気づいていない。
俺も気づかなかったことにして目を反らした。
いまは仁葵ちゃんのきれいな髪を乾かすことに集中だ。
俺の幼なじみの美鳥は、昔から俺のことを婚約者だと周囲に言いふらしている。
それは美鳥が言い出したことで、事実じゃない。
でも子どものわがままだからと、好きに言わせていたのは事実だ。
よく小さな女の子が「お姫様になる!」とやりたいことをそのまま口にするあれと一緒だと思っていたから。
わざわざそれに「お姫様にはなれないよ」と真実を突きつけるようなことをする奴はいないだろう。